闇に溺れた天使にキスを。



神田くんをじっと見つめれば。
彼は、ふっと微笑んだ。


「俺のこと、知りたいの?」

ストレートな質問。
私の気持ちは全部、見抜かれている。


今更嘘はつけないし、質問してしまったからには引き返せない。

一度、首を縦に頷けば、彼は素直に答えてくれた。


「この刺青は、中学の時だよ」

ドクンと、心臓が大きな音を立てる。


一体彼は、どんな気持ちで。
それからどうして刺青なんか───


知れば知るほど、すっきりしない心。
それどころか靄が広がるような気分だ。


「刺青は入れて当然の家系だから、中学の頃が妥当かな。もしかしたら少し早いかもしれないけど」


ドクンと心臓が脈打つ。

刺青は入れて当然の家系って…何?


ひとつの考えが頭に浮かんだけれど、急いでそれをかき消す。

もし、そうだとしたら。

神田くんはとっても“危険な人”だと捉えてしまうことになるから。

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