闇に溺れた天使にキスを。



「こんな簡単に収まるぐらい、小さいんだね。
かわいすぎてどうしよう」

「……っ」


ダメ、これ以上は。
言葉でも私をドキドキさせる彼はきっと、確信犯。


「か、神田くん、離れて」
「それは無理なお願いかな」

「どうして」
「白野さんは俺の“特別な存在”に変わったから」


私は神田くんの、特別な存在?


「ぜ、絶対嘘だ…」


その場しのぎの言葉に決まっている。
神田くんの優しい声音のせいで、穏やかな口調のせいで。

冗談に聞こえないだけ。


「嘘じゃないよ。実際、白野さんには俺ことを話してる。
白野さんには言ってもいいかなって思うから」

「で、でも特別な存在なんてありえない…」


こんな良い所のない私が、神田くんの特別だなんて。


「正確に言えば、白野さんを俺の方へ引き込むため、かな。ダメだってわかっているのに止められない。

それは特別な存在だからに変わりないけど…ごめんね。もう今更だけど」


後ろに彼がいるため、表情はわからないけれど。
低く、冗談のかけらもない真剣な声が耳に届いた。

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