闇に溺れた天使にキスを。



「私、引き込まれちゃうの?」

神田くんのほうに、引き込まれる。
それってどういう意味なのだろう。


「そうだよ。だから白野さん、悪い子に染まろうね」
「……っ」

低く、どこか甘さのある囁き。
思わず肩を震わせる。


この間と同じ感覚。
保健室でも、神田くんは私を染めたくなると言った。

どうやら彼は私を、悪い子にさせたいらしい。


「私は、悪い人間になんかならないもん」

あの刺青を見てしまったため、“悪い子”の意味が警察沙汰になってしまうレベルじゃないかと考えてしまう。


「じゃあ俺が染めてあげようか」

神田くんの右手が、私の頭を撫でる。
その優しい手つきが、今は少し危険だ。


「だ、ダメ…」

「残念だけどもう遅いよ。
前から言ってるけど、もう逃げられないからね」

「そんな…」


どうやら私はもう抜け出せないと。
それじゃあ私は、悪い人間にさせられてしまうの?

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