闇に溺れた天使にキスを。



不安な気持ちでいっぱいになる私。

そんな私の感情を読み取ったのか、彼が小さく笑って口を開いた。

「大丈夫。
俺から離れない限り、命の危険はないよ」


彼は安心させるつもりで言ったのだろうけれど。
ひどく心に引っかかる。

彼の言葉を鵜呑みにしてしまえば───

これから命に関わるようなことが起きる、という風に捉えてしまう。


その時、彼の背中についてある傷を思い出した。
深い切り傷。

そんな怪我を負ってしまうところに彼はいる。


「もし、もし神田くんから離れちゃったら…?」

「離れたくない意志さえあれば十分だよ、俺が絶対離さないからね」


深まる謎に疑問。
彼は全てをわかっているように話している。

けれど私にはわからない。

危険なのは神田くんであって、私は関係ないんじゃないかと思ったからだ。


もしかして、神田くんといることによって私も危険に晒されるの?


「じゃ、じゃあ…神田くんから離れようとしたらどうなる…?」

それで何もないのなら、離れるほうがお互いにとってもいいはずだ。

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