闇に溺れた天使にキスを。



昨日もお昼を一緒に食べたとはいえ、あれは食べる人がいない私のためだ。

つまりは神田くんの優しさである。


「だから未央、昨日の昼休みに何があったのか詳しく教えてよ!話ずれちゃったから結局聞けてないや」

「教えるほどのことは何もなかったよ?」


なんて言いながら、神田くんに抱きしめられたことを思い出すけれど。

慌てて首を横に振って、そのことを忘れようとする。


「……何その行動。怪しい」
「あ、怪しくなんか…」

「あ、もしかしてここでは話しにくいことがあったとか!?それなら今日の放課後、どっか行こうよ」

「放課後……」


私も沙月ちゃんと遊びに行きたい。
けれど今日の放課後は、図書室に行かなければいけない。

別に今日じゃなくてもいいのはいいのだけれど───


神田くんが、来るかもしれないから。
もちろん彼が目的ではない。


ただ昨日彼が、私が行くなら行こうかなと言っていたから、行かないといけないかな…なんて。

本当は私自身、神田くんと関わりたいと心のどこかで考えているのかもしれない。

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