闇に溺れた天使にキスを。



「でも相手が神田くんで良かったね」
「ど、どうして?」

「誠実な人だろうから、欲にまみれてなさそう。
絶対大切にしてくれるよね」


誠実な人、に変わりはないけれど。
神田くんは闇の深い裏があったりする。

誰も知らない彼の危険な一面を、私は知っている。


「でも神田くんとは友達なだけで…」


そう、友達なだけ。
ただのクラスメイトから、話す関係になったのだ。


「何言ってるの?こんなかわいい未央を目の前にして、我慢できるわけないじゃない。いつか取って食べられちゃうよ」

「た、食べ…!?」


今時、人に対して食べるという表現はよくあるのだろうか。

神田くんも沙月ちゃんも、似たようなことを言う。


「とにかく未央は気弱なんだから、気をつけるようにね。
すぐ流されそうだから」

「うっ…」


まさにその通りだ。

自分の意見を中々言えない私は、昔から流されやすい性格をしている。


それは気をつけようと思ったのだけれど───


現時点でも、すでに流されているんじゃないかということは考えないようにした。

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