闇に溺れた天使にキスを。



いつもは中に入ると、図書室の先生と話すのが決まりなのだけれど。

今日は真っ先に、神田くんを探している自分がいた。


しかし、私の探している彼の姿がない。


「あら、白野ちゃん!
やっと来てくれたの!」

「あっ、木原(きはら)先生…!こんにちは」


突然名前を呼ばれ、はっと我に返った私。
明らかに今、無意識のうちに神田くんの姿を探していた。

それほど彼を意識して図書室にやってきた自分いて、恥ずかしくなる。


彼と会うことが目的じゃないのに。

借りていた本を返却し、図書室の先生と話すのが一番の目的なのに。


「やっと来てくれた!実は新しい本が入ったから、早く白野ちゃんに言いたくて」

「中々行けなくてすいません」
「最近、忙しかったの?」

「まあ、少し…あの、慌ただしかったというか…」


忙しいわけではなかったから、曖昧な返事になってしまう。

ただいつも通りの日常が突然変わってしまったため、頭が追いつかず、図書室に行ける余裕がなかったのだ。

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