闇に溺れた天使にキスを。
「……あった!」
この間借りた時は木原先生に直接渡されたため、どこにあるかわからなくて。
探していたら、ようやく見つけたのだけれど。
「た、高い…」
背伸びしてギリギリ届く位置に、その本が置かれていた。
つまり普通の体勢では届かない。
一応台のようなものはあるのだが、古いため音が響きやすい。
だからあまり使いたくなく、頑張って手を伸ばして取ろうとしたその時───
「……これ?」
低く優しい声が、私の耳に届いた。
後ろに人の気配を感じ、その人物が神田くんであるとすぐにわかった。
もう何度も、この声を聞いているから。
「か、神田くん…どうして」
振り向けない。
すごく近い距離に彼がいそうで。
「あれ。俺、昨日言わなかった?
白野さんが行くなら俺も行こうって」
言っていた、けれど。
「私が来た時、神田くんいなかったもん…」
「ごめんね、先生に呼ばれてて。もしかして、待ってくれてた?」
ドキッと、一度心臓が大きく音を立てる。
待っていた、というか。
彼がいるものだと期待していた。