闇に溺れた天使にキスを。
「教室にいなかったから、先に行ってると思ってて……でも、いなかったから来ないのかなって」
あくまてで否定も肯定もしない。
ただ本音を言うだけ。
「行くに決まっているよ。だってここに来れば、白野さんと会える」
きっと本気じゃないとはわかっているけれど。
そんなことを言われてしまえば胸が高鳴って当然だ。
「ミステリーとかも読むんだね」
言葉を返せないでいたら、神田くんは私が取ろうとしていた本に手を伸ばし、それを取った。
「う、うん…先生にオススメされて」
「オススメかぁ。それは気になるな」
近くで聞こえる彼の声。
勉強をするスペースと本棚は離れているため、私たち以外にいた3人の生徒には今の状況がバレていないだろうけれど。
声も聞こえてしまえばいけないと思い、小さな声で話す私たち。
そのため、自然と神田くんとの距離も近くなる。