闇に溺れた天使にキスを。
「彼女作らないの?」
お兄ちゃんに彼女ができただなんて話、最後に聞いたのはいつ頃だっただろうか。
もう随分前だったような気がする。
「今は未央だけいればいい」
「もー、大げさなこと言わないで」
「大げさじゃないよ、本気。
未央とふたり暮らししたい」
「断固拒否します!」
お兄ちゃんとふたり暮らしだなんて、毎日が大変そうな気がしてならない。
「えー、悲しい」
なんて言いながら小さく笑うものだから、まったく悲しそうに聞こえない。
「そろそろ準備するの」
「じゃあお兄ちゃんが制服に着替えさせてあげ…」
「嫌い!大嫌い!」
「ごめんって未央。冗談だから怒らないでくれ」
「早く部屋から出て行かないと口聞かないもん」
結局私がきつく言うまで、お兄ちゃんは離れてくれなかった。