闇に溺れた天使にキスを。
「佐久間、くん?」
明らかに先ほどとは様子が違う神田くん。
「……俺に優しくしないで」
「えっ…?」
怪我をしていたから、私が勝手に絆創膏を貼っただけというのに。
それが余計なお世話だったのかな。
「ご、ごめんね」
だとしたら謝らなければいけない。
不快な思いをさせたのなら余計に。
「いや、白野さんは悪くないんだよ。
ただ俺が慣れてないだけだから」
ぎゅっと、神田くんが抱きしめる力を強める。
彼にしては珍しい抱きしめ方で。
慣れていない、のは…優しくされることに慣れていないってこと?
もしそうだとしたら、少しだけ神田くんを纏う環境が想像できる。
優しくされない場所。
厳しく育てられたか、それとも放置されてきたか。
私の知識がないだけで、そのどちらでもない可能性だってある。
とにかく私は、神田くんのことを知らなさすぎる。
「でも、ありがとう」
お礼を言った神田くんの声は、どこか小さく聞こえた気がした。