闇に溺れた天使にキスを。
空き教室
月曜日。
ついにこの日がやってきた。
「あら、未央。
すごく嬉しそうな顔してどうしたの?」
朝から上機嫌な私に、お母さんが笑いかける。
「なんでもないよ」
なんて言うけれど。
実は今日、とても楽しみで嬉しいことがあった。
それは神田くんが学校に来ること。
彼の言った通り、月曜日から来れるようで。
前日である昨日の夜にメッセージが届いたのだ。
それから途中の駅から一緒に行こうとも言われ、朝から私の頬は緩い。
神田くんと会えるとなれば、不思議と明るい気持ちになれる。
ヤクザの若頭であると聞いて、驚きもあるけれど。
それ以上に彼と会えることが何より嬉しくて、そこまで気に留めていなかった。
「未央、よかったな。
やっと友達が来るんだよな」
洗面所に行って準備をしていると、今度はお兄ちゃんに声をかけられた。
「そうなの!」
お兄ちゃんには相談に乗ってもらっていたため、彼と連絡がとれて月曜日から学校に来ると言えば、安心したように微笑んでくれた。
その時は兄らしく、いつものふざけた様子はなくて。
もちろん“彼”ではなく、“友達”と濁してはいるけれど。
もし言ってしまえばお兄ちゃんがどうなるかって、容易に想像できるから。