闇に溺れた天使にキスを。
*
準備を終え、いつもと同じ時間の電車に乗る。
「……楽しみ」
思わず言葉にしてしまう。
神田くんと会えるってだけで、いつもの風景が違って見えた。
それほど、今日この日が待ち遠しかったのが正直なところ。
自分の中で神田くんの存在が大きくなっているのだ。
車内にアナウンスが流れ、私の降りる駅名が言われる。
乗り換えの駅だ。
次に乗る電車から神田くんに会えるのだ。
いつも私がホームで待っているところで、彼と合流することになっている。
階段を降り、下のホームが見えてくる。
私がいつも待っている場所にいけば───
見慣れた、綺麗な横顔が見えた。
遠くからでもわかるほど、目立つのは神田くん。
黒い髪が少し風でなびいている。
耳たぶにつけてあるピアスが、やはり危険さを漂わせている。