闇に溺れた天使にキスを。
そんな彼が突然こちらを向いた。
まるで私に気づいたかのように、彼が私の存在を捉えた。
「……白野さん」
ふわりと優しく笑う神田くんに、思わずドキッと胸が高鳴る。
朝にぴったりな、さわやかな笑み。
「神田くん、おはよう」
少し緊張しながら挨拶し、彼に近づく。
今日はちゃんとネクタイを締めている制服姿の彼。
「おはよう」
目を細めて微笑む彼の何気ない動作にも、ドキドキしてしまう私は少しおかしいのだろうか。
彼のそばまで行き、隣に立つ。
「これからは毎日来れるの…?」
「うん、毎日行けるよ。迷惑かけてごめんね」
「ううん、気にしないで」
きっと彼は、この間私が会いに来た日のことを言っているだろう。
けれど、迷惑だなんて一度も思ったことがない。
「だって神田くんと会えて嬉しかったもん。
迷惑なんかじゃなかったよ」
素直な気持ちを口にする。
変に誤解されてほしくなかったから。