闇に溺れた天使にキスを。
「これからは俺だけの白野さんになって」
逃げ場のない状況で、まっすぐ見つめられながら質問される。
もし、頷けば。
私は神田くんの彼女になるの?
「……私、神田くんに見合わなくて…自信なんてな」
「肯定か否定の言葉しかいらないよ」
不安を口にすれば、それを遮るように彼がまた口を開いた。
肯定か、否定の言葉───
「……神田くんだけの、私になりたい」
それならもう答えはひとつだった。
私はもう、彼から離れられない。
思えば神田くんと関わりを持ったその日から、彼に惹かれていたのかもしれない。
感情が揺さぶられる。
彼の言葉や行動だけで。
コントロールされているかのように。
「……どうしよう」
ふと、神田くんのほうを見れば。
彼は自分の手で口元を覆っている。
「神田、くん?」
「嬉しすぎてちょっと、やばいかもしれない」
顔が半分ほど隠れているため、あまり表情はわからないけれど。
目は嬉しそうに細められている気がした。
「どうして?」
「白野さんが俺のものになったから」
「私は神田くんの彼女になったの?」
少し不安になったため、彼に質問する。
“神田くんだけの私”が、彼女を指すのかわからなくて怖くなったからだ。