闇に溺れた天使にキスを。
それから10分も経たないうちに準備を終えた私たちは、電車で映画館のあるショッピングモールに移動するため、家を出た。
「……暑い」
「暑い!?大丈夫か未央、熱中症だったらやばいから言うんだぞ!今すぐ水分補給を…」
「せめて外に出かける時だけは真面目にしてください!」
家の外でもシスコン全開されると目立ってしまい、周りの人に引かれてしまう。
「み、未央からのお願い……お兄ちゃんに任せとくんだ。
本物のカップルに思われるぐらい、真面目にするからな!」
「そ、そこまではしないでいいから」
「未央のお願いを全力で叶えるのが俺だ」
そう言って、お兄ちゃんは私の手を握ってくる。
「お兄ちゃん、手を握らないで」
「嫌なら離せばいいだろ?」
早速シスコンを隠してきたけれど、今度は私に意地悪をしてくる。
こんなの、神田くんと同じじゃないか。
そう、神田くんと───
『もう全部、どうでもいいから俺のものになってよ』
余裕のない、野生的な表情。
低く甘い声。
全身の力を奪うような、強引で深いキス。
『俺だけの白野さんになって』
私は神田くんの彼女になった。
それから1週間ほど経ったけれど、特に今までと変わったことはない。