闇に溺れた天使にキスを。



キスも、あの空き教室でしたのが最後だ。

毎朝、一緒に学校へ行っているけれど。
それ以外は何も進展はない。


なんて、私がおかしいのかな。
付き合ってまだ間もないのに、欲が深くなるのは。

神田くんと過ごせる、一緒の時間がもっと欲しいと思ってしまうのは。


「……はぁ」

お兄ちゃんに手を握られながら歩いていると、気づけば駅に着いていた。


今頃神田くんは何をしているのだろう。
危ないことをしているのだろうか。

次期組長の彼を狙う人だっているかもしれない

そう思うと怖くて連絡を取りたいけれど、面倒くさい女だとは思われたくない。


「未央、元気ないな」

頬を突かれ、我に返る。
その時にはもうお兄ちゃんと電車に乗っていて。

それに気づかないくらい、ぼーっとしていたのだ。
いや、正確には神田くんのことを考えていたのだけれど。


「元気あるよ?
だってこれから、観たかった映画が観れるもん」


考えすぎなんだ、自分。

付き合って間もない今は、このくらいの距離感が正解なのだと。


それに神田くんは危険なところにいる人だ。

沙月ちゃんのような恋愛をできると思ってはいけないし、付き合い方なんて人それぞれ。


1週間ほどでこんな不安になってどうする。

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