闇に溺れた天使にキスを。
「ポップコーンとホットドッグと、ジュース。
あと何か欲しいものあるか?」
「そ、そんなに頼まなくても…食べきれないよ」
映画館に着き、チケットを購入した後。
食べ物を買おうと思い、お兄ちゃんとレジに行けば。
なぜかたくさん頼むお兄ちゃん。
「食べられるだろー。
あとは甘いチュロスとか?」
「も、もう大丈夫なの」
「じゃあチョコのチュロスで」
私の意見をスルーして、結局チュロスを頼むお兄ちゃん。
そんな私たちを見て、店員さんは微笑ましそうに見つめてきた。
「仲のいいカップルさんですね」
「……えっ!?いや、あの」
「よく言われます。
俺もこんな素敵な彼女がいて、幸せ者ですよ」
誤解する店員さんに慌てて否定しようとしたけれど、お兄ちゃんがそれを邪魔する。
いつものシスコンは封印され、キラキラと王子様のような笑顔を浮かべている。
そんなお兄ちゃんを見て、店員さんは照れていたけれど。
いつもはこんな姿じゃないって言いたくなった。
オンオフの切り替えが早い上に、差が激しすぎる。
「お兄ちゃんのバカ…」
「未央、悪かったって。調子に乗った」
「調子に乗りすぎだよ…嫌い」
注文した食べ物を受け取った時、完璧に誤解してしまった店員さんに『とてもお似合いで羨ましいです』と言われたため。
館内へ移動しながら、誤解を解こうとしないお兄ちゃんに対して拗ねていた私。