闇に溺れた天使にキスを。
*
「うー……」
「お、俺のかわいい未央が泣いてる。泣き顔もかわいいぞ。でもそんなに感動したのか?」
映画が終わり、エンディングの曲が流れている時。
ラブコメだと思っていたけれど、最後はとても感動するシーンがあり、それからずっと涙が止まらない私。
「だって、あんなラストだって思わないもん」
「未央をこんなになるまで泣かせた映画が憎いぞ」
冗談混じりにいうお兄ちゃんだったけれど、慰めるようにして頭を撫でてくれる。
鞄からハンカチを取り出し、それで涙を拭う。
「これからどうする?すぐカフェ行くか?
別に服とか見てもいいんだぞ」
こうしてお兄ちゃんと遊びに行く時、いつも私を優先してくれる。
重度なシスコンを除けば、本当に良いお兄ちゃんである。
「じゃあ服とか見たい」
「未央が気に入ったのあればいつでも言えよな。お兄ちゃんが買ってあげるから」
「い、いいよ…さすがに服くらいは」
「いや、逆にお願いしたい。
かわいい未央に貢がせてくれって」
貢がせてくれ、だなんて。
やっぱりお兄ちゃんはずれている気がする。
その後、ショッピングモールをぶらぶら歩き、本当にお兄ちゃんが服を何着か買ってくれた。