闇に溺れた天使にキスを。
それから制服に着替え、リビングのある一階に降りるため、部屋のドアを開けようとしたその時。
私が開けるより少し先に、誰かが反対側から開けてきた。
その相手とは、確認せずともわかる。
「未央!まだ寝て…って、起きてるのか。くそう」
「───お兄ちゃん、ノックぐらいしてよ…」
勢いよく中へ入ってきたのは、私の二歳年上である、大学一年生のお兄ちゃん。
名前は白野 良樹(よしき)。
朝は得意な私なのに、お兄ちゃんは毎日起こしにくる。
そして私が起きていると毎回悔しがるんだ。
「おはよう、俺のかわいい未央」
さらには私をぎゅっと抱きしめてくる。
何を隠そう、お兄ちゃんは自他共に認めるほどの超シスコンなのだ。