闇に溺れた天使にキスを。
無知の世界
まるで目覚ましの代わりかのように、朝から騒がしいセミの鳴き声で目が覚める。
時計を確認すると、アラームをセットした時間のちょうど5分前だった。
重い体を起こし、ベッドからおりる。
夏休みに突入して1週間が経った今日。
私は夏期講習を受けるため、まだ学校があった。
「……あ」
制服に着替える前に、なんとなくスマホを確認すれば、神田くんからメッセージがきていて。
どうやら彼は今日、用事があるため夏期講習に参加できないらしい。
夏休みに入ってからも朝は神田くんと一緒に行っているため、会えないとなると寂しい気持ちになった。
けれど用事があるのなら仕方がない。
今日は我慢しようと思い、彼に返信した。
「未央、また今日も家にいないのか!?」
「わっ…お兄ちゃん……」
今日も相変わらず、ノックをしないで私の部屋へと入ってくるお兄ちゃん。
もちろん大学生であるお兄ちゃんも夏休み中だったのだけれど。
私が毎日夏期講習に行っているため、寂しいと毎日嘆かれていた。
「仕方ないもん、将来のために勉強しないと…」
「俺が教えてやるから!だから今日は休もう」
確かにお兄ちゃんは賢い。
けれどお兄ちゃんと勉強だなんて、できないのはわかっている。
何度か頼んで教えてもらったことがあるけれど、シスコンが発動されて中々勉強が進まなかったのだ。
「ううん、学校に行くの」
迫ってくるお兄ちゃんを振り切ろうと思い、鞄を持って部屋を出た。