闇に溺れた天使にキスを。
今度は追い討ちをかけるかのように───
「拓哉さんに優しく触れられたのも、キスも。それ以上のことだって全部、私が初めてなの。この意味わかる?」
目を見張り、息の仕方を忘れてしまう。
視界に映るのは勝ち誇ったように笑う宮橋先生の姿。
「だって拓哉さん、慣れてるでしょ?キスしたことあるんならわかるんじゃない?キスひとつで女の理性を奪う、まったく高校生に見えないわね」
耳を塞ぎたくなる。
この場から逃げ出したくなる。
そんなの嘘だと、決め付けたくなるけれど。
「女の扱いにも慣れているし、何より呑み込みが早い。教えていた側の私がいつのまにか拓哉さんの虜になってる。それから、あなたも」
人差し指を私のほうへ向け、それから口角を上げた宮橋先生は。
「“こっちの世界”は強いだけじゃ勝てない。女が必要となる時だってある。だから女を落とし、利用するの。
それは“武器”にもなるからね。だから私が拓哉さんに“女を落とすための技術”を教えた」
私にゆっくりと近づいてきた。
その間も話をやめようとはしない。
信じたくなくて涙が目に浮かび、首を横に振るけれど。
「短期間で拓哉さんは習得して、今じゃあの手慣れよう。
自分の感情もコントロールできるからね、拓哉さんに落とされない女はいないんじゃない?だからあなたもそのひとり、勘違いしないほうがいいわよ」
宮橋先生は私の肩に手を置いた。
「あなたは拓哉さんの何番目でしょうね?」
「……っ」
泣いたらダメだとわかっているのに、涙が頬を伝った。