闇に溺れた天使にキスを。
*
リビングに行き、両親を含めた家族四人でご飯を食べたあと。
私は準備を済ませ、家を出る。
「未央、今日は俺と一緒に勉強しようか」
「…………」
「それともどこかご飯でも食べに行く?」
「お兄ちゃん、今日は午後から授業じゃないの?」
電車で通学している私は、最寄り駅まで8分ほどの道をいつも歩いている。
それは今日も同じなのだけれど。
なぜか隣にはお兄ちゃんがいた。
「さっきも午後からって言っただろう?
未央は忘れん坊さんなんだな」
かわいい、と付け加えてお兄ちゃんに頬を突かれる。
「じゃあどうしているの」
「未央をひとりにしないためだな」
「どこまで来るの?」
「どこって、未央の学校まで」
「絶対やだ!」
学校まで来られたら、困るのは私だ。
絶対質問攻めにされる。
あの男の人は誰だって。