闇に溺れた天使にキスを。






リビングに行き、両親を含めた家族四人でご飯を食べたあと。

私は準備を済ませ、家を出る。


「未央、今日は俺と一緒に勉強しようか」
「…………」

「それともどこかご飯でも食べに行く?」
「お兄ちゃん、今日は午後から授業じゃないの?」


電車で通学している私は、最寄り駅まで8分ほどの道をいつも歩いている。

それは今日も同じなのだけれど。
なぜか隣にはお兄ちゃんがいた。


「さっきも午後からって言っただろう?
未央は忘れん坊さんなんだな」

かわいい、と付け加えてお兄ちゃんに頬を突かれる。


「じゃあどうしているの」
「未央をひとりにしないためだな」

「どこまで来るの?」
「どこって、未央の学校まで」
「絶対やだ!」


学校まで来られたら、困るのは私だ。
絶対質問攻めにされる。

あの男の人は誰だって。

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