闇に溺れた天使にキスを。



「あー、忘れてた…お前って自信ないやつだっけ」
「え?」

「あれだ、気弱いくせにあんな格好したら男に好き放題させられるぞってことを言いたかったんだよ」


男に、好き放題?


それで思い出したのは、神田くんにされるがまま状態だった先ほどのことで。

また顔が熱くなる。


「……っ」

神田くんに好き放題されて、思い通りになって。
彼にハマってしまった私は、最終的に求めていた。


「あー、もしかしてされた後か?」
「ち、違います…!」

「へぇ、どこまでやった?最後まで?」
「涼雅くんのバカ!そんなことしてないもん!」


何より聞き方がひどすぎる。

どこまでってそんなの…あれ以上のことをされてしまうと私の心臓がもたない。


「…ムキになってる」
「……っ、そんなことない」


私のバカ。
大慌てで否定した結果、余計に怪しまれてしまう。


「けどなんか、いいな。お前ら見てると羨ましい」
「……え」

けれど突然涼雅くんが真剣な声でボソッと呟いたかと思うと、『行くぞ』と言って歩き出してしまう。


先を行く涼雅くんの表情を確かめることはできない。


私も慌てて涼雅くんの後ろをついていく中、先ほどの言葉を思い出した。

小さい声だったけれど、確かに聞こえた。


私たちを見てると羨ましいって。
それは何に対して?

その時に思い出す、涼雅くんの過去の話。


お母さんに乱暴なことをされ、女の人が嫌いだって。
仕返しするかのように女の人を乱暴に扱っているって。

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