闇に溺れた天使にキスを。



けれど簡単に踏み込むわけにはいかず、気まずい沈黙が流れてしまう。

それは車に乗り込んでからも同じで。


ちらっと涼雅くんを見れば、西日が車内に射しこんで彼の銀髪をキラキラと輝かせていた。

当の本人は窓枠に肘をついて窓の外を眺めている。


その表情はどこか儚げで、神田くんと重なる部分があった。

もしかしたらふたりはどこか似ているため、こうして信頼しあっているのかなと思ってしまうほど。


「……なんであんなこと言ったんだろ」


その時、沈黙を破るようにして話したのは他でもない、涼雅くんだった。


「あんな、こと…?」
「さっき、羨ましいって。あれほぼ無意識」

ゆっくりとこちらを向いて、私をじっと見つめてきた。
その瞳は揺らいでいる。


「無意識に羨ましいって思ってるみてぇだな、俺。拓哉に本気の相手が見つかって安心している反面、羨望してる」

「羨望…」

「なんか今の俺、女々しいよな。やっぱ聞かなかったことにしてくれていいから」


そう言ってまた私から視線を外すけれど、それじゃあダメな気がした。


「涼雅くんより私のほうが女々しい自信あるよ…!気が弱いし、地味だし……人なんだから、ひとつやふたつダサいところがあっていいと思う…!」


言ってから後悔した。
これだと何もフォローできていないじゃないかと。

逆に涼雅くんが女々しいしって認めてしまったようなものだ。


「あ、あの、その…ご、ごめんなさい涼雅く」

急いで謝ろうとしたその時。


「……ふはっ」

涼雅くんが突然笑い出してしまう。
それもツボに入ったようで、肩を震わせている。


「りょ、涼雅くん…?」

「本当にお前っておもしれぇのな。
ダサいとか、結構刺さること言うし」

「そ、れはごめんなさい」


やっぱり何ひとつフォローできていなかった私。
反省しようと思った中、涼雅くんは今もまだ笑っていて。

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