闇に溺れた天使にキスを。
「あー、腹いてぇ。
自分も落として相手も落とすやつ、初めて見た」
「うっ…」
完璧に私のやらかしてしまった部分を指摘する涼雅くん。
けれど見た感じ、怒ってはいなさそうで安心する。
「あ、あの…怒ってないの?」
それでも怖くなったため、恐る恐る聞いてみる。
「怒るってなんで?逆になんか吹っ切れた」
「吹っ切れたの…?」
涼雅くんって変な人。
普通なら怒ってもいいはずなのに、逆に吹っ切れただなんて。
「ああ。お前みたいな変な奴といると、変に元気でんのかもな」
「へ、変は余計です…!」
いや、私も涼雅くんを変な人扱いしたけれど。
何も口にすることはない。
「事実だろ?俺より女々しい白野さん」
「むっ、すぐそういうこと言う」
一応元気付けようとしたつもりなのに空振りに終わるどころか、からかわれてしまう始末。
「ついでにすぐ拗ねるガキだし…あれ、お前女々しい上にガキって終わりだな」
「……嫌い」
もしかしたら涼雅くんは、神田くん以上の意地悪人間かもしれない。
「お前の反応がおもしれぇから悪いんだろ」
「わ、私のせいじゃないです…!」
「拓哉の前ではすぐ照れておとなしいのに、俺の前ではすげぇ強気なのな?」
「うっ…」
そんなこと言われても、私だってそれに気づいている。
神田くんといる時はドキドキしてばかりいて、思考が鈍くなるけれど。
涼雅くんといれる時は、気楽に友達感覚で居られるのだ。
「涼雅くんは、友達だから……」
「拓哉は特別?」
「……うん、特別」
私の中で、なくてはならない存在になっている。
「あーあ、やっぱ羨ましいな」
今度ははっきりと、わざとらしくも聞こえる大きさの声で涼雅くんは話し、目が合うなりどちらからともなく小さく笑った。