闇に溺れた天使にキスを。



駅までの間、周りからの視線はすごく感じられた。
多分ほとんどの人たちが恋人と誤解しただろう。

私たちを兄妹だと知っている人のほうが少ない。


「……はぁ」

朝から精神を使ったような気がして疲れてしまった。


さらに電車には多くの人たちがいて座れなかったため、ドア付近に立つ。

学校のある駅に着くまで、乗り換えを含めて40分はかかる。


特に乗り換えた後の電車の人は異常なほどに多く、いつも満員電車。

学校に着くまでに体力を消耗するというのに、今日は朝から精神力も使ってしまった。


そして5駅分乗ったところで電車を降り、エスカレーターを使って乗り換えのホームへ移動する。

電車が来るまで3分ほどあるようで、ホームで待っていたら。


「……あ、いた」

低いけれど優しい声が近くで聞こえてきた。
つい最近、はっきりと聞いたことのある声。

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