闇に溺れた天使にキスを。






夢のようだった。
夏休み中にも神田くんに会えるって。


『俺とデートしませんか』


私は迷わず頷いた。
そんな私を見て、彼は嬉しそうに笑い。


『来週に花火が上がる夏祭りがあるから、そこに行きたいな』と言った。


その夏祭りは私も知っているくらい大規模なもので。
学校からさらに30分先にあり、少し遠いけれど。

夏祭りという響きが何故だかデートらしく思えて、頬が緩んでしまった私。


夏祭りまでの約1週間、神田くんと会えなくて寂しかったけれど。

何回かメッセージのやり取りをして、さらには電話もしていたため、いくつか寂しさは埋められていた。


それでも会えないのは辛かったけれど、気づけば1週間の月日が経っており。


「み、未央…!?なんだそのかわいい格好は!」
「…あ、お兄ちゃん」


夏祭り当日、私はお母さんに頼んで浴衣を着ることにした。

実はというと、神田くんも浴衣だったりする。


「なあ、もしかして彼氏というやつとか!?」


そう、お兄ちゃんに神田くんの存在がバレた日からずっと、お兄ちゃんは子供のように拗ねて話をろくに聞いてくれなかったけれど。

2日前にようやくきちんと話すことができ、嫌々ながらも認めてくれたお兄ちゃん。


「う、うん…夏祭り、行くの」
「ダメだ!」
「こら、良樹!未央の浴衣が崩れるでしょう!」


お兄ちゃんがいきなり抱きついて阻止しようとしてくるから、私より先にお母さんに怒られる始末。


「俺の未央が……未央が」

「あんたの未央じゃないの。未央だってもう高校生なんだから、彼氏のひとりやふたり、いるでしょう?」


呆れた様子のお母さんだったけれど、お兄ちゃんは変わらず拗ねている様子で私からしぶしぶ離れた。

< 364 / 530 >

この作品をシェア

pagetop