闇に溺れた天使にキスを。
「白野さん、おはよう」
夢だと思った。
昨日の出来事は本当だったとしても、これは嘘だと。
私の視界に彼───
神田くんが映っているだなんて。
それも彼は私を見ている。
そんなこと、あるはずがない。
「あれ、白野さん?」
「……ひゃ、はい」
さ、最悪だ。
咄嗟に声を出そうとして、噛んでしまった。
「……ふっ、かわいい」
小さく笑われた後、かわいいと言われて顔が熱くなる。
たまらなく恥ずかしい。
「あ、あの…どうして神田くんがここに……?」
まだ信じられない。
学校外でも、神田くんと言葉を交わしていることに。
「どうしてって、俺も次に来る電車に乗るから」
「へ……」
「だから結構白野さんのこと、ホームで見かけていたんだよ。今までは話す関係じゃなかったけど、これからは違うからね?」
含みのある言い方。
思わずドキッとしてしまう。