闇に溺れた天使にキスを。
「ああ、勘違いするなよ?傷が深いだけで生きてるから。もし白野が傷口塞いでくれなかったら、今も危険な状態だったかもしれねぇって。
ありがとうな、拓哉助けてくれて」
なぜか涼雅くんにお礼を言われる。
少し微笑みながら。
「……そんな、私は何も…だって、神田くんが私を庇ってくれたの。それに、もし先に神田くんが病院に行っていたらもっと傷が浅くて済んだかもしれないのに」
けれど私はすぐ首を横に振った。
悪化させてしまったのは、私の存在があったからで。
それにもし夏祭り自体行かなかったら、きっと神田くんは───
「バカか。そこまで自分責める必要ねぇよ」
マイナスなことばかり考えていると、突然涼雅くんに頭を軽く突かれてしまう。
「うう…」
「拓哉はいつも周り優先。自分は死んでもいいとか思うようなやつ。
だから驚いたけどな。『簡単には死ねない』ってお前に言った時。死ぬわけにはいかないと思ったんだろ」
「え……」
確かに私は彼に、『簡単には死ねない』と言われた気がする。
ただあの時は無力な自分に打ちひしがれていたから、記憶が曖昧なのだ。
「そこまで言わせたお前、すげぇよ。
最近は拓哉自身も変わってる気がするし」
「変わってる…?」
「なんか、どんどん自然体になってる気がする」
もしその言葉が本当なら嬉しいことだ。
やっぱり自分を作るより、ありのままの自分でいたほうが気楽にいられるはず。