闇に溺れた天使にキスを。
「医者から絶対安静言われてんのに、本当は今日も動こうとしたし。もう止めるのに必死。
最終的に拓哉より上の組長の命令で、今は大人しくしてるけど」
「そ、それは止めないと…」
「だろ?だからお前が言えばいいんだよ」
けれど、さすがに『キスをしてあげる』だなんて言えるわけがない。
どうにかして他に止める方法がないかと考えているうちに、神田くんの家に着いてしまい。
ここに来るのは2回目だったけれど、やっぱり大きくて広い。
まだまだ慣れなくて圧倒されつつ、涼雅くんの後ろをついていく。
やってきたのは2階にある神田くんの部屋。
ここに来るのも2回目で、この中に彼がいるのだと思うと少し緊張してしまう。
そして涼雅くんがノックをしようとしたその時───
ガチャリとドアノブがまわり、部屋の中からドアが開けられた。
「……組長」
「ああ、涼雅……と、来てくれたんだね」
部屋の中から現れたのは、神田くんのお父さんである組長で。
涼雅くんは一瞬驚いた後、頭を下げた。
「あ、あの…こんにちは」
組長が私のほうを向いたため、慌てて頭を下げる。
「こんにちは。せっかくのデートの日に、怖い思いをさせてしまってすまないね」
「え…」
するとなぜか組長に夏祭りの日のことを謝られてしまう。
「せっかくの楽しい日を潰してしまっただろう?」
「で、でも組長は関係なくて…」
「関係あるよ。きっと相手は神田組に恨みがあるのだろうから」
冷静な組長は、まるですべてをわかっているかのように話した。