闇に溺れた天使にキスを。



「それなのに拓哉の怪我で、ここまで心配させてすまない…いや、ありがとうと言うべきかな。

拓哉をこんなにも大切に思ってくれて」


一度、組長の手が私の頭に置かれる。



「……あ、そうだ。拓哉はさっき寝たばかりだから、起きるまで寝かせてやってて欲しい」


そう言って優しく微笑んだかと思うと、組長は部屋を後にした。


「なんだ、拓哉寝たのかよ。
タイミング悪りぃな」

「あ、涼雅くん!静かにしないと起きちゃうよ」


寝かせてやって欲しいと言われた直後なのに、涼雅くんが早速大きな声を出してしまう。


「大丈夫だろ。
あいつ、多分ろくに寝れてねぇだろうから」

「そうなの…?」

「拓哉、何もしないでじっとするの苦手みてぇだし。寝るのとか特に嫌いだから」


寝るのが嫌いだなんて、初めて聞いた。


「変なやつだよな、本気で。俺だったらコアラみてぇに1日のほとんどを睡眠にとりたい」


“ナマケモノ”ではなく、“コアラ”の名前を出した涼雅くんがかわいいと思ってしまい、つい笑みがこぼれてしまう。


「……ふふ」
「……なんだよ」


そんな私を不服そうに見つめる彼。



「だってコアラって表現、かわいくて」
「……ふざけんな」

「え、わわっ…ダメだよ髪が……!」


どうやら涼雅くんの気分を害してしまったようで、髪をわしゃわしゃと撫でられてしまった。

結果、髪がボサボサになってしまい。


慌てて手ぐしをして髪を整えているうちに、先に涼雅くんが神田くんのいるベッドのほうへと行ってしまった。

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