闇に溺れた天使にキスを。



けれど神田くんはまったく起きる気配がない。


それだけ眠れていなかったのかと思うと、変に動くわけにはいかず。

涼雅くんの言う通り、その場でじっとしていた。


神田くんは時折ピクリと動きながら、スヤスヤと眠りについていて。

少し顔が見たいなと思い、顔を上げようとしただけで彼は私を抱きしめ直す。


「……ふふ、かわいい」

ここまで無防備な姿は初めてだったから、何故だか嬉しくなって頬が緩んでしまう。


どうか今日はぐっすりと眠れますように。

そう願いを込めて私も神田くんに寄り添った。


最初のうちは嬉しくて頬がゆるゆる状態だったけれど、時間が経つごとに私もなんだか眠くなってきて。


そういえばこの3日間、ろくに眠れていないことを思い出した。


少しだけ私も寝ようかなって。

神田くんに抱きしめられていると、安心して睡魔に襲われるから。


なんて、ただの言い訳だろうけれど。


一度眠気に襲われると抗うことはできないため、ゆっくりと目を閉じる。


だんだんと意識が遠のいていく中───


彼がまた私をぎゅっと抱きしめた気がした。

< 393 / 530 >

この作品をシェア

pagetop