闇に溺れた天使にキスを。



「じゃ、じゃあ絶対安静にするって約束してくれる?」

「もちろんするよ」
「……うー」


ぎゅっと目を閉じ、またも唸った後。
諦めて首を縦に頷いた。


「……わかった」
「本当?破ったらダメだからね」

私が断らないってわかっていたくせに、わざと嬉しい表情をしてまた抱き寄せられる。


「どうしようかなぁ、いつもはできないことでもしようか」

「いつもは、できないこと…?」


とても嫌な予感しかしない。


「白野さんからキスするとか、なんならメイド服とかでも着せようか」

「なっ…!?」


恐る恐る聞けば、やはり彼は私の予想を上回ってきた。


キスとか、メイド服とか。

そんな言うことを一日中聞かされていたら、私の心臓は壊れてしまうことだろう。


それに───


「か、神田くんはメイドとか、そういうのに興味あるの…?」

正直、まったく興味がなさそうなイメージがあったため、彼の口から“メイド”という言葉が出てきて驚いてしまう。


「…あるっていったら?」

神田くんが濁すように答えてくるから、不安になって胸がズキッと痛んだ。


やっぱりかわいい女の子とか、綺麗な人が好きなんだなって思うと苦しくなる。

私とはかけ離れたような存在だから。


「胸が、苦しくなる…」


ぎゅっと彼の和服を掴む。
離れないというアピールのつもりで。


「……っ、そんなかわいいことして。
俺が唯一興味があるのは白野さん本人だよ」

「……へ?」


意味深な回答。

唯一興味があるのが私本人だなんて、どういう意味なのだろう。

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