闇に溺れた天使にキスを。
「りょ、涼雅く…」
「もー、せっかくいい雰囲気だったのに」
「へ…」
「いい雰囲気って…こんなクソ甘い状況に誰が耐えられるか」
すると横になっていた神田くんも起き上がる。
そんな彼ははまったく動じておらず、涼雅くんがこの部屋にいたことに気づいていた様子で。
「い、いつからいたの…!?」
「いつって、お前が寝てる時から」
「……っ!」
ぶわっと顔が熱くなり、恥ずかしさのあまり布団で自分の顔を隠す。
嫌だ、恥ずかしい、今すぐこの場から消えたい。
今までの会話を涼雅くんにも聞かれていたとなれば、恥ずかしくて平常心を保てない。
「なんで…どうして言ってくれなかったの」
「部屋出るタイミングを逃したから?」
平然としている涼雅くんの顔なんて、恥ずかしくて見れない。
「それにしてもお前ら、いつもこんな甘ったるいやりとりしてたんだな。俺だったら考えられねぇ」
「い、言わないで…!」
「そうかな?俺は別に気にしたこともないけど…」
焦っている私に対し、神田くんはいつも通りで。
動揺すらしていない。
「こんな甘い会話、無理だわ。
なんだっけ?白野がメイドふぐっ」
まだ話を掘り返してくるから、思わず神田くんの枕を涼雅くんの顔へと投げつけると見事にヒットしてしまった。
「りょ、涼雅くんなんて嫌い!」
「……白野、てめぇ」
まさか枕を投げつけられるとは思っていなかったようで、少しキレた様子で私の名前を呼ぶ涼雅くんに、思わず肩がビクッと跳ねる。
「ほら涼雅、白野さんを怖がらせない」
「先手は誰だと思ってんだ」
「涼雅だね、やりすぎは良くないよ」
「おかしいだろこいつ、拓哉にはこんなことしねぇのに」
「りょ、涼雅くんならいいんだもん…!」
神田くんにしがみつきながら、涼雅くんに負けじと言い返す。