闇に溺れた天使にキスを。



「伝言?」
「ああ、白野にって」


さらには私に向けての伝言なようで、少し怖くなってしまう。


何を言われるんだろうって、不安に思っていたら───


「この前のこと、ごめんだってさ。謝りたいけど機会がないからって本人は言ってるけど、多分面と向かっては恥ずかしくて言えないんだろうな」


涼雅くんが受け持った伝言は、私への謝罪の言葉だったらしく。


それを聞いた瞬間に安心して体の力が抜けたのと同時に、宮橋先生はそこまで悪い人じゃないのかもしれないとも思った。


「結構反省してるみてぇだぜ?
じゃあな」


私や神田くんの反応を待たず、涼雅くんは部屋を後にしてしまう。

途端に静かになる部屋。


「……一応言っておくけど、華さんが反省したからって関わるとかはしないからね」


神田くんは話しながら、私の口を塞ぐ手を離してくれた。


「うん…」


きっと神田くんが宮橋先生と話しているところを見れば、胸が痛んで苦しくなるだろうけれど。


もしかしたら宮橋先生も神田くんのことが好きなのかもしれないと思えば、複雑な気持ちになってしまう。



中途半端な自分。

矛盾している私は、いったいどうしたいのだろうって。


「どうしたの?もしかして、華さんのことで何か悩んでる?」


そんな私の異変にすぐ気づく神田くん。


「……ううん、なんでもないよ」


もちろんこんな中途半端なこと、彼に言えるはずもなく。

だって困らせるだけだ。


私も神田くんと宮橋先生が関わらないことを望んだのだから。

< 402 / 530 >

この作品をシェア

pagetop