闇に溺れた天使にキスを。
「なんでもなくないね、スッキリさせないと」
それでも神田くんは引き下がろうとせず。
逆に私の本音を引き出そうとしてきた。
「……っ、面倒くさいって思われちゃう、から…」
「絶対に思わないよ。白野さん相手にそんなこと、思うわけない」
優しい声音が私の心を揺るがし、つい本音をこぼしてしまった。
「……神田くんを独り占め、したいのに…私と同じ気持ちの人が他にいるんだって思うと、なんだか複雑な気持ちになっちゃって……」
それは宮橋先生に限らず、だ。
過去に神田くんがたくさんの女の人と関係を持っていたのなら、きっとその中で必ず彼を好きになった人がいるだろう。
それなのに、私だけがこんな風に神田くんと一緒にいるという贅沢をしていいのかって。
「……優しいね」
「えっ…」
「優しいし、純粋な考え方。そんな白野さんに俺は惹かれたんだろうけど、なんか悔しいな」
「悔しい…?」
一瞬ヒヤリとした。
悔しいという言葉はマイナスなものだったから、彼の気分を害してしまったんじゃないかって。
「白野さんにはもっと欲張りになってほしい、俺に対してもっと欲深く。そんな他の女のことを考えてしまうくらい、余裕があるってことだよね?」
神田くんが私の体を自分のほうへ向け、頬を優しく指で撫でられる。
「もっと俺に依存してよ。そんな周りへの優しさがなくなるくらい、染まればいいのに。俺のことを考える時は、その純粋さをなくしてほしい」
依存───
その言葉に、少なからずゾクッとしてしまう。