闇に溺れた天使にキスを。



「えっ、と…」

「俺はそんな純粋じゃないから、白野さんの視界に他の男が入るのも嫌だし、だんだん涼雅に対しても嫉妬してる自分がいる。いつまで我慢できるかな」


今度は頬をつんつんされ、遊ばれているように思えるけれど。

今の言葉を聞き逃すことはできない。


「どうして涼雅くんに対しても嫉妬しているの…?」

「なんか俺といる時より白野さん、自然体な気がするし。今思い出しただけでも涼雅が羨ましい」


思い出したように話すその声は、優しいようで少し不服そうだ。


「そんなことは…」

確かに涼雅くんとは友達感覚で話せる自分がいるかもしれない。


けれど“友達”と“好きな人”の差は大きすぎる。


神田くんといる時は、感情のすべてが彼にコントロールされているようで。

彼の言動や行動に驚くほど左右されるのだから、それほど好きだということなのだ。


「俺って結構心が狭いんだよ」
「嘘だ」


神田くんの心が狭いだなんてそんなこと、あるはずない。


「本当だよ。白野さんのことになると、些細なことですら気になってしょうがなくなる」


今度は私の頬を包むようにして、両手を添えられる。


「神田くん…?」

先ほどからスキンシップというものがいつもより激しい気がする。


「どうしよう」
「へ……」

「なんか今になって白野さんが目の前にいるんだって思ったら、なかなか信じられなくて夢みたいだ」


変なことを言う神田くん。

けれど本人は冗談のつもりなんて一切ないようで、真剣に私を見つめていた。

< 404 / 530 >

この作品をシェア

pagetop