闇に溺れた天使にキスを。
「えっ、と…」
「俺はそんな純粋じゃないから、白野さんの視界に他の男が入るのも嫌だし、だんだん涼雅に対しても嫉妬してる自分がいる。いつまで我慢できるかな」
今度は頬をつんつんされ、遊ばれているように思えるけれど。
今の言葉を聞き逃すことはできない。
「どうして涼雅くんに対しても嫉妬しているの…?」
「なんか俺といる時より白野さん、自然体な気がするし。今思い出しただけでも涼雅が羨ましい」
思い出したように話すその声は、優しいようで少し不服そうだ。
「そんなことは…」
確かに涼雅くんとは友達感覚で話せる自分がいるかもしれない。
けれど“友達”と“好きな人”の差は大きすぎる。
神田くんといる時は、感情のすべてが彼にコントロールされているようで。
彼の言動や行動に驚くほど左右されるのだから、それほど好きだということなのだ。
「俺って結構心が狭いんだよ」
「嘘だ」
神田くんの心が狭いだなんてそんなこと、あるはずない。
「本当だよ。白野さんのことになると、些細なことですら気になってしょうがなくなる」
今度は私の頬を包むようにして、両手を添えられる。
「神田くん…?」
先ほどからスキンシップというものがいつもより激しい気がする。
「どうしよう」
「へ……」
「なんか今になって白野さんが目の前にいるんだって思ったら、なかなか信じられなくて夢みたいだ」
変なことを言う神田くん。
けれど本人は冗談のつもりなんて一切ないようで、真剣に私を見つめていた。