闇に溺れた天使にキスを。



「そう、わがまま。だって自分から白野さんを遠ざけておいて、あれからすぐに会いたいって思ったんだ。

それは今日、白野さんに会えるまでずっと。
もうすでに手遅れなんだなって思った」


神田くんの頬に触れている私の手を、彼はそっと掴む。

そんな彼の瞳に吸い込まれそうだ。



「すでに依存してる」

ゾクッと全身が震えて。
神田くんの言葉にはそれほどの重みがあった。


「こんなの初めてだから、自分でもどうしたらいいのかわからないけど…」


ゆっくりと神田くんが互いの距離を縮めてきた。
そして───


「とりあえず今は目の前にいる白野さんに触れたい」


私を捉える瞳から逃れられなくなって。

額をくっつけられただけなのに、ドキドキと胸がうるさくなって思考が鈍くなる。


「ちゃんと本物だって確かめたい」


そんなこと言われなくても本物だというのに。
だって今、お互い触れ合っている。


けれど彼は意地悪そうな表情ではなく、どこか不安そうな顔をして話すから───

ゆっくりと縦に一度、頷いた。


「……ありがとう」

何故だかお礼を言われ、少し恥ずかしくなってしまう。


けれど彼は笑うわけでもなく、ゆっくりとふたりの距離をゼロになるよう近づいてくる。

最初は一度、触れるだけの優しいキスを落とされて。


私の髪が邪魔になったのか、神田くんが髪を耳へとかける動作をした。


それから頬に手を添えられて、ドキドキと胸がうるさくなる中。

また唇を重ねられる。


けれどまた優しいキス。

まるで私を焦らすかのような、そんなキスが繰り返された。

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