闇に溺れた天使にキスを。
「そばにいる…神田くんの、そばにいたいの」
少し彼の浴衣を掴んで、まっすぐ見つめ返す。
私だって神田くんのすべてが好きなんだ。
真面目で優しいところも、少し危険なところも。
それから意地悪な神田くんだって、その中にも優しさはあるため嫌いになんてなれない。
「…じゃあこれからも俺から離れないで。
絶対に白野さんを守り抜くから」
思わずゾクッと肩が震えた。
いつのまにか神田くんが危険なオーラを漂わせていたからだ。
けれどそれに気づいた時にはもう手遅れで───
「さっきは我慢してたんだけど…」
神田くんの片方の手が私の頭を撫で、その手が滑るようにして頬、最後には顎まで移動し添えられる。
「あんなキスだけじゃ物足りない」
ダメだ。
彼のペースにはまっていく。
体が硬直したかのように動けなくなって、神田くんから目を逸らせない。
「嫌なら抵抗してね」
妖艶に笑う彼は、私が抵抗しないということをわかって言っている。
そして私が口を開く前に、強引に唇を塞いできて───
実は、私だってさっきの優しいキスだけじゃ物足りないと思っていた。
恥ずかしくて口にはできないけれど、心や体は驚くほど正直で。
今みたいな強引なキスを欲しがっていた私は、それを受け入れ彼に身を預ける。
息が乱れても、自分のものじゃないような甘い声が漏れても、決して彼の浴衣を掴む手は離さなかった。
いつもより深く、さらに甘いキスをして。
目を閉じて彼を欲しがって。
もう抜け出せないのだと悟る。
甘くて危険な彼に、どんどん溺れていく自分がいた。