闇に溺れた天使にキスを。
「周りに助けなんかいねぇ中、力の敵わねぇ相手に首絞められんだ。抵抗しても無駄、泡吹いて気絶しようものなら水かけられて腹殴られる」
その瞳に光は宿っておらず、生々しく語る涼雅くん。
今彼は、自分の話をしているのかもしれない───
ただ黙って、彼の話を聞く。
「相手は楽しそうに笑って、人間の心なんてない。
けど人前ではそれが嘘のように優しくされる。
だから誰も気づかねぇ」
ソファにもたれかかり、天井を見上げる涼雅くん。
光が当たっている銀色の髪だけがキラキラ反射して輝いていた。
「子供ながらに怖かったよな。終わりなんて一切見えねぇから。死と隣り合わせの今よりずっと怖い」
彼は小さく笑ったけれど、強がっているようにも思えて。
いつもより小さく感じた。
「だから俺はお前の気持ちが少しわかる。
あの状況を見た時、正直思い出したから」
じっと涼雅くんから目が離せないでいると、彼はまたこちらを向いた。
今度はまだ赤くなっている首に触れられる。
「なぁ、言い訳して逃げる気はねぇの?」
ドキッと胸が一度高鳴った。
その瞳に捕らえられたかのようで、動けなくなる。
私なんかよりずっと怖い思いをしていた彼は、こうして辛い経験を話してまで寄り添おうとしてくれる。
心が揺らがないはずがなかった。
ゆっくりと涼雅くんが近づいてきて、いつのまにか後頭部に手がまわされる。
きっと目の前の彼に甘えてしまえば楽で。
罪悪感は全部神田くんのせいにして───