闇に溺れた天使にキスを。
「……おい、さっきからゴソゴソうるせぇ。
すすり泣きも耳に障る」
「……っ」
どうやら私のせいで眠れなかったようで。
「ご、ごめん…」
思わず起き上がり、謝ろうとしたけれど。
「いいから横になれ」
「え……」
「どうせひとりじゃ眠れないとか言うんだろ?」
涼雅くんは私の心を読み取り、ベッドまでやってきてくれた。
そして私のすぐ近くで腰をおろした彼。
「寝ないの…?」
「何でお前と一緒に寝ないといけねぇんだ。
俺はソファで寝るから早く寝ろ」
言葉はきついけれど、涼雅くんは私の手を優しく握ってくれる。
「お前が寝るまでだからな、そばにいてやるのは」
「うん…ありがとう」
何気ない優しさに胸がポカポカして。
さっきまでの寂しさが嘘のように飛んでいく。
「……ったく、ひとりで寝れねぇとかガキかよ」
「今日は、寂しい…」
「どうせいつも親に寝かしてもらってんじゃねぇの」
「む、そんなことない」
酷いことを言ってバカにしてくる涼雅くんは、いつもの意地悪な姿で。
けれど優しく握られた手に安心した私は、だんだんと眠気がやってきた。
「本当にガキだな」
「……うん」
バカにされているはずなのに、あまり頭に入ってこなくて言い返せなくなる。
眠気が勝るとはまさにこういうことなのだろう。
「……寝るのか?」
「うん…眠たくなってきちゃった」
瞼が重くなり、ゆっくりと瞬きするけれど。
次第に瞬きのスピードは落ちていき───
「……我慢してんだから、これぐらいは許せよな」
「ん……」
意識が途切れ途切れになる中、ギシッとベッドが軋んだ気がして。
それから唇に何やら柔らかいものが当たる感触がしたけれど、確かめる力もなくそのまま夢の中へと落ちていった。