闇に溺れた天使にキスを。
「……寝ぼけてるのかな」
スヤスヤと気持ちよさそうに眠る涼雅くんは、本当に私をぎゅっと抱きしめてきて。
実はちょっと苦しいな、なんて思ったり思わなかったり。
けれど睡眠の邪魔はできないなと思い、大人しくしたその時。
「あ…」
今日は平日だということを思い出した私。
まだ冷静な気持ちのまま、なんとなく時計を確認しようと思い、枕のそばに置いていたスマホにそっと手を伸ばす。
なんとかギリギリスマホを手に取ることができ、時間を確認した瞬間───
「……っ、えぇ!?」
今度は冷静さを欠いた状態で大きな声を出し、勢いよく涼雅くんから離れる。
「……うっせぇ」
さすがの涼雅くんもこれには目が覚めたらしく、眉をひそめながら私を見つめてきた。
「そ、そんなこと言ってる場合じゃないよ…!
もう朝の11時だよ!?が、が、がっこ…」
これは一大事だった。
学校があるというのに、私は呑気に寝ていたなんて。
「あ、アラームは…!?」
「……ああ、鳴ってたけどお前起きねぇからわざわざ消してやったんだよ」
「どうして起こしてくれないの!」
「気持ちよさそうに寝てたから俺も二度寝した」
焦る私と対になるようにきて、涼雅くんは冷静で。
どうして冷静でいられるのかが不思議でたまらない。
「は、早く行かないと…!」
「まあ落ち着けよ。宮木に親のフリして休みだって連絡入れといてもらったから」
「え……?」
宮木さんが…?
確かに宮木さんの声音だと、先生は親だと勘違いするかもしれない。
けれどそういう意味じゃないのだ。
「が、学校をズル休みはダメだよ…!」
熱や用事なんてないのに、休むことがいけないのだから。