闇に溺れた天使にキスを。



涼雅くんは宮木さんから紙袋を受け取ったかと思えば、それを私に差し出してきた。


「はい、これ制服。
洗ってもらったからすぐ着れる」

「え…いつの間に」

「お前が寝てる間に取りに来させた」
「え、そんな…」


まったく気づかなかった。
わざわざ宮木さんが取りに来てくれていただなんて。


「あとこれは病室に置いてきたお前の荷物な」
「え……荷物まで」

「これも宮木が持ってきてくれたんだ。
お礼は言っとけよ」


涼雅くんの言葉を聞き、私は慌てて宮木さんに視線を向けた。


「あ、あの…宮木さん、わざわざすいません…ありがとうございます」

「気にしないでください。雪夜様のご命令ですので」



いくら命令とはいえ、ホテルまで来てくれた上に今もこうやって送ってくれている。

感謝してもしきれないのだ。


「あとは家に帰る前に、どっかで制服に着替えねぇとな」

「そ、そこまで大丈夫だよ…駅のトイレとかで着替えるから」


「お前はバカか、これから何があるかわかんねぇんだ。家まで送る」


少しトーンを落とした真剣な声。


『これから何があるかわからない』


前までは本当なのかと疑う自分がいたけれど、今は素直に受け入れて怖いと思ってしまう自分がいた。


昨日みたいなことがまた起こったらと思うと、やっぱり怖い。



「昨日のことがあって怖いかもしれねぇけど、なるべくお前のそばにいるようにするから」


私を安心させるような言葉。
素直に嬉しかったけれど───



その言葉は神田くんから聞きたかったな、なんて思ってしまう自分もいて。

もちろんそんなことは口にせず、素直に頷いて私は涼雅くんにお礼を言った。

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