闇に溺れた天使にキスを。
「最近未央が俺と絡んでくれないから寂しいぞ」
「ま、お兄ちゃん…」
さらには抱きしめる力を強めてきて苦しくなる。
なんだか心配して損した気分だ。
さっきの涙は嘘だったのかな。
見間違いだったのかなって。
「だから今日は未央の手料理な」
「えっ」
「俺の好きなものたくさん作って」
その後もなかなかお兄ちゃんは私を離してくれず、格闘した後。
ようやく離してくれた頃には、だいぶ制服のシャツにシワが寄っていた。
いつも通りのお兄ちゃんに呆れつつ、私は部屋へと戻る。
「……はぁ」
鞄を床に置いてため息をつき、なんとなくベッドに腰をおろした私。
なんとなくスマホを開いたけれど、もちろん神田くんから連絡なんかなくて。
これから先、どうなってしまうのだろう。
神田くんとの関係はどう変わってしまうのだろうかと考えるたび、不安が積もっていくけれど、私にはどうすることもできない。
だから気づかなかったんだ。
今この瞬間にも、闇が迫っていることになんて。
神田くんに囚われ、すぐそばまできている闇になんて───