闇に溺れた天使にキスを。
*
それから1週間、私は神田くんと関わりのない日々を送っていた。
行きも帰りも宮木さんの車には涼雅くんが乗っていて。
神田くんは学校に来ているけれど一切私のほうを見ようとせず、ただ本を読んでいるだけ。
正直言って寂しいし苦しい。
胸が張り裂けそうになる。
神田くんに話しかける勇気なんてない私は臆病で。
本当に彼は私のことなんて何とも思っていないのかもしれない。
今も毎日宮橋先生のところへ行っているのかもしれない。
怖くなって、不安になって。
もう限界が訪れようとしていたある日のこと。
「……えっ」
いつものように涼雅くんを乗せた車が私の家のすぐ近くにやってきて、後部座席に乗った私は目を疑った。
「りょ、涼雅くん…?」
「なんだよ」
「な、なんで……私の高校の制服着て…」
そう。
視界に映ったのは、神田くんと同じ学校をしている涼雅くんの姿で。
つまり涼雅くんは、私の高校の制服を着ていたのだ。
さらには銀色の髪が真っ黒に変わっており、思わず目を見開いて驚いてしまった。
「どうだ?似合ってる?」
「に、似合ってるも何も…」
「言っただろ?手伝ってやるって」
その言葉を聞いて、ホテルでの会話を思い出した。
確かに涼雅くんは、神田くんから本音を言ってもらうために手伝ってくれると言ってくれた。
それって私の高校に転校してくるってこと、なの…?
「わざわざ転校しにくるの…?」
「わざわざっていうか、今は俺がお前を守らないといけねぇんだから都合いいだろ」
そうか。
だから涼雅くんはあの時『丁度いい』と言ったのだ。
まさかこんな形になるとは思っていなくて、まだ信じられない私。
けれど確かに涼雅くんは学校指定の鞄に制服を見にまとっている。