闇に溺れた天使にキスを。
「だからって、転校はさすがに…」
「日に日に元気なくなるお前見て黙ってられるか」
「……っ」
「期間はこの件が落ち着くまでだから安心しろ」
安心しろも何も、先ほどの言葉で泣きそうになる私。
やっぱり涼雅くんは優しい人だ。
私なんかのために、そこまでしてくれるだなんて。
「落ち着いたらまたすぐ転校するし」
「え……じゃ、じゃあもし明日落ち着いたら?」
「すぐ転校だな」
「そんなことできるの?」
「親父の力借りるけどな。昨日まで通ってた高校も飽きてた頃だし、丁度いい」
さらっと言ってのけるけれど、涼雅くんの性格上、友達はきっと多いはず。
それにキラキラ輝いていた髪はもう反射することなく、逆に黒く染まっており艶があった。
「……ごめんね」
「あ?」
「だって私のせいで…」
「お前のせいじゃねぇよ。前の高校に思い入れとかなかったし」
「でも髪だってわざわざ」
「これは別に、真面目に見せるためだし。
拓哉を刺激するのにも丁度いいだろ」
ニッと、悪そうな笑みを浮かべる涼雅くんは、いったい何を企んでいるのだろう。
「それに結構似合うだろ」
自分の黒くなった髪をいじり、自慢げに笑う涼雅くん。
「……うん、かっこいい」
銀髪の時は正直怖いという気持ちが真っ先にやってきたけれど、今の涼雅くんを恐れる人は多分いないだろう。
むしろ男女限らず人がどんどん寄ってきそうだ。
「……っ、お前って何も考えずに褒めるんだな」
素直な気持ちを口にしただけなのに、涼雅くんはプイと私から顔を背けた。
「涼雅くん…?」
「まあ安心しろよ、すぐ結果は出ると思うし」
「結果…」
「今日からが楽しみだな」
やっぱり涼雅くんは口角を上げ、悪そうな笑みを浮かべており。
なんだか嫌な予感がしつつも、私は涼雅くんに任せるほかなかった。