闇に溺れた天使にキスを。



「なんだ、お前ら知ってたのか」


生徒たちの反応を見て、先生はつまらなさそうな顔をした。


「先生、早く紹介してください!」


ひとりの女の子が先生を急かす。
その瞳には期待が込められており、キラキラと輝いていた。



「まったく、ここの女子はイケメンにしか目がないのか」


呆れたように先生がため息をついた後、『入っていいぞ』とドアの向こうにいる誰かに声をかけた。

その誰かとは、もちろん───


「……えっ!待ってすごいかっこよくない!?」
「嘘!神田くんと同じくらいかっこいいよ!」



銀色だった髪が黒に染まった涼雅くんなのだけれど。

もちろん制服は着崩されているため、残念ながら真面目には見えない。


神田くんは知っているのかなと思い、もう一度彼に視線を向ける。


すると何ということだろう。


神田くんは本当で知らなかったようで、涼雅くんのほうを見るなり両目を見開き驚いていた。



「名前は雪夜涼雅、男女問わず気軽に名前で呼んでくれていいから。多分またすぐ転校するだろうけどよろしくな」


明らかに涼雅くんは私を見つめながら自己紹介をしている。

けれど周りは気づくはずもなく、かっこいいなどを連呼しており。


今の自己紹介で絡みやすいと思ったのが、ひとりの男子が涼雅くんに質問した。


「彼女はいんのか?」

それもよくある質問で。

もちろん涼雅くんはいないと答えるだろうと思っていたら───



「彼女はいねぇけど、彼女にしたい相手ならいる」


相変わらず私のほうを見てニヤリと笑う涼雅くんから慌てて視線を外す。

今彼を見てしまえばダメな気がしたからだ。

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