闇に溺れた天使にキスを。
「てなわけで、俺は白野さんの隣にでも座ろうかな」
涼雅くんの席は窓際の一番後ろだと決まっているのに、勝手に席を変えてもらったようで。
代わりに私の隣に座っていた男の子が一番後ろの席へと移動した。
それも文句ひとつ言わず。
きっと私の隣が嫌だったのだろうな。
「よろしく、白野さん」
「……っ」
痛いほど感じる視線。
転校初日に早速目立っている涼雅くんに頭がついていかない。
「涼雅くん、さすがにやりすぎだよ…」
「こうでもしねぇと意味ないからな」
「視線が痛くて…」
「じゃあサボるか?この前みたいに」
ニヤッと口角を上げ、私を悪い道へと誘ってくる。
もちろん慌てて首を横に振り、それを拒否する私。
そこで一旦は落ち着き、授業が始まったのだけれど───
「いつから好きだったの!?」
「んー、二ヶ月前くらい?」
「じゃあふたりはどこで出会っなの?」
「悪い奴に絡まれてたの助けた」
問題は休み時間。
あっという間に私たちの周りを人が囲み、質問攻めが始まった。
それにしてもサラサラと嘘をつける涼雅くんは本当にすごい人だと思う。
「じゃあ今はまだ涼雅くんの片思い?」
「そうなるな。そのうち落とす」
「待ってかっこいいんだけど!」
早速クラスのみんなは涼雅くんのことを下の名前で呼び、すでにクラスに溶け込んでいる彼。
やっぱり人柄的にもすぐ人気者になるタイプなのだ。
「かっこいいって言われても、白野さんは落ちてくれねぇからなぁ」
白野さん白野さんって、いつもは“白野”か“お前”呼びのくせに。
上辺だけそんな丁寧に扱われても嬉しくない。