闇に溺れた天使にキスを。
「やだ」
「もー、せっかく我慢してたのに」
「へ……?」
「結局無駄になっちゃったよ、頑張った意味ない」
今はもう冷たさなんて微塵も感じられず、私を優しく抱きしめる彼。
優しい声に優しい手つき。
私の知っている神田くん。
好きという気持ちが今にも溢れそうで、ぎゅっと彼に抱きついた。
「本当にかわいいことしかしないね」
「好き、神田くんが大好きっ……」
こうなる日を私はずっと待ち望んでいた。
それまでの期間、ずっと寂しくて辛くてたまらなかったから。
「お願いだから誘惑しないで。
俺がどれだけ我慢してるか知らないくせに」
「我慢……」
「本当は全部終わってから話そうと思ってたけど、白野さんに辛い思いさせちゃうから」
そう言って優しく頭を撫でられる。
じゃあ、神田くんが私から離れていったのには何か意味があるの?
「……神田くんは、私が嫌いになったわけじゃない?」
「なりたくてもなれなかった」
「え……」
「だって涼雅といい感じになってるし、俺がどれだけ嫉妬してたか白野さん知らないよね?」
初めて聞く神田くんの本音。
彼は嫉妬していたの?
「俺だけが白野さんのこと好きで、バカみたいだなって思ってた」
「違う、私は神田くんが好きなのっ……」
「うん。だから勘違いしてた俺がバカだよね」
思わず顔を上げて訴えれば、神田くんは目を細めて優しく笑う。
「白野さん。俺の話、最後まで聞いてくれる?」
目の前の彼は、もう怖くない。
冷静さを取り戻しており、ちゃんと全部聞きたいと思ったから首を縦に頷いた。